歯科衛生士がお話しする歯の講座の第58講目です。
4月になりました。
桜も見ごろを迎え、今年は早いといわれ少しずつ葉桜となってきました。
さて、根面う蝕というものを聞いたことがありますか?
歯は大別して、ものをかむ部分である「歯冠部」と歯を支える「歯根部」から成ります。
歯冠部は歯肉(歯ぐき)より上の部分、歯根部は歯肉に埋まっている部分というのが臨床的な分類です。
加齢や歯周病により歯肉が下がると歯の根元が見えてきますが、この歯肉から覗く歯根部の面を、「根面(こんめん)」とよびます。
この露出した根面が虫歯になることを「根面う蝕」といいます。
↑上の写真の患者さんはとても熱心に歯磨きをされていました。
しかし、残念なことに歯周病によって歯肉が下がり、歯の根面が露出したために、そこから虫歯になりました。
歯肉が下がり露出した根面へのケアが、それまでの歯磨きでは行き届きませんでした。
家で例えるなら、建物自体は新築同様に維持できているのに、土台の柱がシロアリに食べられてしまっているようなものです。
柱が倒れれば、ポキリと倒れてしまいます。
年齢とともに歯肉が下がることが多いために、根面う蝕は「高齢の方の疾患」というイメージがありますが、じつはそうとはかぎりません。
歯周病などで歯肉が下がれば、当然若い人にも起こります。
さらに、根面う蝕は多くの場合、自覚症状がなく進みます。
患者さんが歯の変色に気づいたときには、すでに進行してしまっていることもあります。
根面はなぜ虫歯になりやすい?
根面が虫歯になりやすいのは
①根面の象牙質を覆うセメント質がごく薄いこと。
歯冠部の場合、厚みがあり硬いエナメル質が鎧のように象牙質が覆っていますが、根面では、ごく薄いセメント質がコーティングしているだけです。
そのためセメント質は細菌の出す酸によりたやすく溶かされてしまい、すぐに内部の象牙質が露出してしまいます。
②象牙質がエナメル質よりも酸に弱く、成分が溶けだすpHが高いのです。
私たちのお口のなかは飲食ごとにお口の細菌の酸によりpHが下がります。
一定のpHを下回ると、歯の成分が唾液中に溶け出す(脱灰)のですが、この現象が起こるpHがエナメル質と象牙質では違います。
溶け出すスタートラインは、エナメル質が5・5で、象牙質6.4。
つまり、いままでエナメル質では溶け始めなかったpHでも象牙質では溶け始めてしまうのです。
このように、根面はすぐに象牙質がむき出しになり、しかも象牙質は歯の成分が溶けだしやすい性質があります。
続きはまた・・・